施設設置場所について

 当地域は、札幌がまだ町であった頃の円山町との境に位置し、都市計画で教育文化地域と想定された地区に当たり、広い街路樹をもつ通りは町境で急に道幅が変わっています。現在では、沿線にマンションが多く、他都府県からの転入転勤が多い地域で、歴史を窺う人も稀でしょう。マロニエ(実は ベニハナ トチノキ、学名:和マロニエ とも言う)街路樹ある広い北3条の当該クリニックが立つ場所には、2020夏まで札幌の古建築100選に掲載された築110年の古い洋館、関東大震災頃の建造物が建っていました。昭和初期北大工学部の熱力学専門の教授宅で戦前戦後に学生が集った場所でもありました。住居として使われなくなった昭和45年頃から、建物の雰囲気を惜しんで修理し、ストロベリーフィールズ ESPASSEとして、芸術、音楽や劇団等の集いの場に活用されました。その後、周囲のマンション建設や社会情勢変化の中、活用できなくなりました。同じ様な緯度のボストン等欧米では、2~300年使われ続ける建物もある中、古い価値を残したいと維持するも、残念ながら現在の建築基準に沿った改修利用は困難の為、新たな100年を見越し、震災対策含め立て直し、地域医療を提供する場として活用する事としました。(解体前の3Dバーチャル画像をご覧になりたい方は、こちらからご覧ください。) 古い建物や景観は土地の歴史を想起させ、その味わいには、個々の生活歴への想いが含まれます。本州と異なり、北海道では、アイヌや先住民族以外の定着の歴史は長くはないものの、定着の歴史は画一的ではないはずです。単調なマンション街とせずに、場所の利点を生かせないか、四半世紀繰り返し考えてきました。個人で取り組むには重い事ながら、この地に以前から茂る、樹齢200年超えの栗の大木の下、マロニエ並木景観と共に自然を身近に感じ、一方で道都の利便性の中で、今在る各人の中にある子どもを思い起こし、来るのが楽しく、帰るのがうれしい医療場所にしたい。今に至る生活を振り返り、生きなおす。相互に支えあう場所でありたいと願う次第です。